ラベル 018 さよならセシリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 018 さよならセシリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年11月20日水曜日

18 さよならセシリー

 島の南側で見つけたダンジョンの入口は完全に封鎖された状態だった。
扉を開けることはできそうだったけど、セシリーは万が一を考えてそうはしなかった。

「なるべく早く仲間を集めてここを調査したいものだよ」
「でも、危ないんだろう?」
「それはそうだけど、ダンジョンで得られる財宝は大きい。しかも手つかずのダンジョンだから一攫千金のチャンスなんだよ」

 セシリーは野心に燃えた顔をしていた。

「それで死んだら元も子もないと思うけど……」
「やっぱりシローは男だな。女なら命を賭けてでも財宝を得たいものさ」

 いや、俺が臆病なだけで性別は関係ない。
俺は命を賭けてまで財宝を得たいとは思わないし、冒険とかスリルとかはあまり好きではないのだ。

「無理はしないでね」
「ああ、大丈夫さ。それに次は信用できる仲間を集める。シローにへんなことをしようとする奴はここには連れてこないから安心してほしい」

 セシリーの気遣いは嬉しいけど、好みのタイプなら割と強引に迫られても構わないのだが……。
美人も好きだけど愛嬌のある人とか、話の合うタイプでもいいぞ。
若い子も好きだけど、ちょっと疲れた感じの三十路とかも嫌いじゃない。
我ながら節操がないよな。
いや、博愛主義者と言ってもらいたい。

「シローが迷惑じゃなかったら、またあの岩屋に泊めてくれると嬉しいな」
「うん。それじゃあ、セシリーのパーティーが泊まれるような宿屋を作っておくよ」
「それはいい。シローの宿か。ちゃんと料金は弾むとしよう」

 この島にくる人のために宿屋をやるか……。
それも悪くないような気がした。



 セシリーの船の建造には4日かかった。
船と言っても全長6メートル程度のボートだ。
マストと帆は備えているけど大波が来たら持ちこたえられるのか心配になってしまう。

「ここは内海だから、それほど高い波はこないんだよ。それに今の季節は強い風も吹かないしね」

 海の専門家である海賊が言うのだから間違いはないのだろう。
この海は地球で言う地中海のような場所のようだった。

 帆布だけでなく飲料水を貯めておく樽も作製した。
クリス様の時は水瓶を作ったのだが、陶器で出来ている瓶は衝撃に弱い。
あの時は保有MPの関係で作れなかった樽も今では難なく作れるようになっていた。

####

創造魔法 Lv.5
取得経験値:987/1000
MP 278/278
食料作製Lv.4(EXP:174/800)食料作製時間7%減少
道具作製Lv.3(EXP:495/500) 道具作成時間5%減少
武器作製Lv.1(EXP:84/100)
素材作製Lv.2(EXP:18/300)
ゴーレム作製Lv.1(EXP:216/300)
薬品作製――
その他――

####

 経験値があと13あればまたレベルが上がるな。
今夜中にいけるだろう。
セシリーは今日中にモンテ・クリス島を発つし、エッチなフィギュア……ゲフンゲフン……芸術的なフィギュアでも作ろうかな。
モデルはもちろんクリス様とセシリーだ。
実は粘土で作成が可能だったりする。
しかもカテゴリはなんとゴーレム作製。
だけど、残念ながら動いたりはしない。
ただただ造形のみで、自律型のゴーレムとはいかないそうだ。
かなりレベルが上がると好きな形のゴーレムも作れるみたいだけどね。

「シロー、積み込み作業は終わったよ」

 少しだけ寂しそうにセシリーが報告してきた。

「こっちももう少しで出来上がるよ。座って待っててね」

 俺は昼ご飯の準備中だ。
今日はセシリーが獲ってきてくれたイノシシ肉とカブのスープだ。
イノシシの肉は塩漬けにしたので保存がきく。
しかも熟成が進むので独特のうま味を持つようになるのだ。

「しばらくはシローのご飯を食べられないな」
「次に来る時までにレパートリーを増やしておくよ」

 レベルが上がれば酒類やチーズなどの乳製品も作れるようになるはずだ。
いつもよりも会話の少ないランチになってしまった。


 海岸で旅立つセシリーを見送った。

「シロー、本当に世話になった」

 セシリーが笑顔で手を振る。
最後まで俺には指一本触れて来なかったな。
ちょっぴり寂しかったけど、そんな真面目な態度が好ましくもあった。
だけどやっぱり押し倒して欲しかった! 
俺は最後にいたずらを込めてセシリーに抱きつき、その額にキスをした。

「シロー! なにを……」
「安全な航海のおまじない」

 急なことにセシリーが狼狽している。

「おまじないって……ホントに?」
「伊豆の方ではこうするの」

 もちろん嘘だ。
伊豆のみなさんごめんなさい。

「必ずまた来る」
「うん。セシリーの心と体を癒せる場所を俺が作っておくよ。セシリーの仲間たちも歓迎するからね」

 風を孕んで遠ざかるボートが見えなくなるまで見送った。
波間を抜けてカモメが群れで飛んでいく。
どうか俺の代わりにこの祈りを届けてくれないか。
絶え間なく続く潮騒を聞きながらセシリーとクリス様の無事を祈った。


 料理に使う油を作製していたらレベルは6になった。
保有MPは309まで上昇したけど、それ以外の展開はない。
食料はたっぷり確保してあるし、そろそろゴーレムに手をつけようか。
セシリーが去って寂しい気分が増大している。
エロいフィギュアを作る気にもなれない。
もう一体イワオがいれば少しは賑やかになるかもしれないな。
そんなことを考えながらストーンゴーレムの作製をセットした。

 ゴーレムを作製している48時間は他のものは作製できない。
その間は外で作業をしようと思っていたけど、翌日は朝から雨が降った。
地球から着てきたレインウェアはあるのだが、わざわざ雨の中で作業をする気にはなれなかった。
しとしとと降りしきる雨の中でイワオたちだけが黙々と働いている。
岩屋の前に小さな畑を作る準備をしているのだ。
切り株をどけ、大きな岩を移動させる仕事は彼らでないとできないことだ。
雨にうたれながら働く姿はどこか寂しげに見える。
いや、そうじゃないな。
ゴーレムに心はない。
寂しいのは俺の方なのだろう。
だから目に映る光景まで哀調を帯びてしまう。

 何もやることがないので小川に水を汲みに行ったら、増水のために濁っていた。
これでは飲料水にならない。
魔法で水が作り出せると高を括っていたけど、こういう事態もあるということか。
干ばつがやってくることだって考えなきゃいけないし、余裕ができたら貯水槽も作らないといけないな。
水瓶を三つ屋外に置いて雨水をためることにした。
ポチョン、ポチョンという音が音楽のように響いて楽しかった。
考えてみるとここに娯楽はほとんどない。
ゲームもなければ漫画もない。
動画だってみられない。
トランプでも作ってみようかな。
小学生の頃、父親にトランプの一人遊びを教えてもらったことがある。
あの時は携帯ゲームに夢中だったから興味も持てなかったけど、今なら退屈しのぎになりそうな気がする。
それもゴーレムを作り終わったらの話だ。
雨の日は嫌いだ……。
色々思い出して泣いた。


ポーン♪
ストーンゴーレム 作製終了まで00:00:00
ストーンゴーレムが完成しました。出現場所を指定してください。

 二日後の夜、予定通りにストーンゴーレムが出来上がった。
ゴーレム作製のレベルも2に上がり新しいゴーレムを作れるようになったぞ!
降り続いた雨も上がり、空には月が浮かんでいる。
ヌードトランプでも作っちゃおうかな!

70 追跡は終わり、奴はモンスターになった

 俺たちの乗った小型船はシーマたちに曳航(えいこう)されて島の沖合へでた。 これはもともとセシリーの仇敵であったジャニスの持ち物だ。 とはいえジャニスもどこからか盗んできただけのようだけど……。 とにかく今は俺のものになっていてあちこちに改装を施してある。 船体も「修理」...